―校舎を活動拠点として選んでくれた、利用者のみなさんをご紹介するインタビューページ。
第三弾はぽたり珈琲・黒岩健介さん。聞き手はわたくし、「みそぎの里」運営をしている水谷がお送りいたします!早速お話を聞いていきましょう◎
校舎ではどんな取り組みを行っていますか?
家庭科室で自家焙煎のコーヒーの販売と、古道具の販売をしてます。コーヒーは焙煎自体もこの教室でやってます。
―黒岩さんはなぜこの場所にたどり着いたのでしょう?コーヒー屋×古道具屋になったきっかけも知りたいです。
自分は愛媛生まれなんですが、今は家族が誰も愛媛におらんので、自分くらい愛媛戻っておこうかな~という気持ちがあって。
元々和歌山で陶芸の修行をしていたのもあって、陶芸つながりで、産地のある砥部の近くが良いなと思い広田(砥部町)に移住しました。
焙煎を始めたのは本当にただの趣味。自分で飲む用にする程度で、たまに友達から豆を買いたいと言われた時に売ったり。
本格的に売り始めるきっかけになったのは、“元気広田を考える会”という、若者が集まって地域を活性化しようという団体が、自分たち主体の地域還元イベント“村フェス”をやるというので。「せっかくやけん、露店も自分たちで出そう!」ということになりました。
自分は趣味でやってた自家焙煎のコーヒーで出店して、そこで売り始めたというのがきっかけかな。
世間もマルシェとか、野外イベントとかがチョロチョロ地方でも始まってきた頃で、そういうのに声をかけてもらうようになってから、本格的に出店しはじめました。
昔から古道具も好きで、出店の什器やコーヒー道具なんかにも古道具を使って出店しているうちに、ついつい集まってきたり。これからここ(校舎)でやるようなことを、その頃から「いつかやれたら良いな~」と思いつつ、のらりくらり、あれよあれよと溜まりつつ・・・。
いわゆる「趣味が高じて」というやつですね(笑)
今はコーヒーの生豆をネットで買えるようになったり、敷居が低くなったというのもあります。
―なるほど。そこからなぜ御祓に?
元々住むところを探していたときに、いま住居にしている古民家に出会いました。
最初は家でお店をやろうと思ったけど、古いので修繕に時間がかかりそうで大変かなぁと。どうしようか迷っている中、みそぎの里は近所だし、廃校利用ですごい楽しくなりそうな場所で。
ネット販売も考えていたので、ネットも整備されるということを聞いてこれは借りない手は無いなと思いました。
家を古道具の在庫置き場にしていたんですが、どうしても古道具は場所をとるので、うまいことお店とネット両方で販売が出来たらというのがありました。
焙煎に関しても、手回しの小さな道具でやっているので、家でやると煙がもくもくしたり、ゴミ(豆のカス)が飛ぶというのもあって、家の人に怒られるので(笑)別の場所でやった方がいいかな?と思っていたところだったんです。
―最近は焙煎の香ばしい香りが校舎に漂うようになって、こちらとしては幸せなくらいです。豆をチョイスして、挽き立て、淹れ立てのコーヒーを飲めるのも最高。来てくれてありがとうです(笑)
さて、これからここを舞台にどんなことをしていきたいですか?こんなイベントが出来たらいいなとか、そういったことでも。
自分の取り組みが地域の人に知られていくと、この間も早速近所の方から「蔵があるから見に来てほしい」と声をかけてもらって。
地域の人たちの家にも、意外と価値があるものってたくさんあって。そういうものが捨てられるよりかは少しでも売って、さらに整理をするための費用にしたり、これをきっかけに空き家の荷物を整理することに繋がって、結果的に移住希望者に貸してもらえるような家が増えたり、、といった展開になっていけば良いかなと思っています。
あとやりたいのはやっぱり、そうして見つかった古いものを並べるようなガレージセールのようなことかな。
ガレージセールは今はコロナ禍だから難しいかもしれないけど、月に一度か季節ごとに一回くらい、家に眠っている何かを掘り出してもらって、並べて売っていくみたいな、蚤の市のようなものができたら良いなと思ってます。
―近くの人から段々と、そうやってみそぎ全体に広がっていったら良いですね。空き家を貸すことにも繋がったら良い流れが生まれますよね。
そのためにはまずは、古いものたちのストック置き場も整えていかないといけないんですけどね(笑)
―古道具については、単純に好きだったというところから始まったかと思うんですが、黒岩さんが思う“古いものの魅力”を教えて欲しいです。
やっぱり年代を重ねて、新しいものには無い味わいがあるところですかね。特に木や金属製品は年代を追うごとに、新品や新しいものでは出せない、時を経て出てきた美しさがあります。
あとは今の大量生産とは違って、ものが手で丁寧に作られていた時代のものは、やっぱりものとしての美しさがある。逆に、まだ技術が今ほど発達していなかったものは、例えばガラスに気泡が入ってしまったりだとか、琺瑯には波が打っていたりと、作りは粗いんだけど昔の人の息遣いが見られるように感じるんです。
雑味というか、温かみがありますよね。今のものはデザインされて、すっきりしていて確かにすごく格好いいけど、でもカシっとしすぎてるというか。古いものの持つ独自の「間」というか、柔らかみというか、そういったものに惹かれるかなぁ。
―ひとつひとつのものが、それぞれに時を重ねてきた魅力というのがありますよね。いま同じ校舎の中にも、手漉き紙や活版印刷、またそれらを用いて別のものを作ったりと、実際手作業で生み出されるものが沢山ありますが、そういった手で作られたものって、なぜこんなに良いんでしょうね?
やっぱり機械任せじゃない、それに至るまでの人間の努力、一生懸命やった形があるものだから伝わるものがあるのかなと思います。
機械生産の均一性じゃなく、一つひとつに違った味わいが出る。手漉き紙にしろ、活版印刷もそうだけど、人が手を動かしてやることだから当然一枚一枚違う。そこが魅力じゃないですかね。
手で持つと熱が伝わるというか、“手触り感”というのもあるんじゃないかな。
―人の手作業のブレがあるからこそ、なんだか愛おしくなってきますよね。
そんな“ものづくり”に関連する利用者が集まりつつあるみそぎの里ですが、今後校舎や地域がどんな場所になっていったらいいなと思いますか?
やっぱり小学校を起点に盛り上がって、全教室が埋まるくらいになってほしいですね。
地域に良い古民家が見つかれば、校舎からそちらに場所を移す人がいたり、その代わり校舎には新しい人が入ってくるとか、そうやって循環していくのが一番良いのかなって。
今のところ校舎を利用しているのは御祓に住んでいる人ばかりだけど、住んでない人が借りてくれた場合は、校舎で活動しているうちに「この地域に暮らしてみたいな~」と思ってもらえたら移り住んでもらうとか。
商店街がまた盛り上がるとまではいかないまでも、校舎だけでなく地域の中にも新しくお店ができてきたりしたら将来的に面白いよね。
―新しいお店ができたら嬉しいですよね~!
そうよねぇ、そういうキーなところができると、意外と若者が集まってきたりして。
最初は何も無いような場所でも、そういう(キーになる)お店が出来ると、だんだん人が集まってきてそこにまた新たなお店が出来てとか。そういう展開になる可能性も出てくるのかなと。
そういうことが最終的には起こっていれば良いな。その走りとして、校舎が一番盛り上がってくれるのが良いなと思います。
―校舎がそうやって盛り上がり始めると、お客様の幅も広がる気がしますよね。これからどんな方に来ていただきたいですか?
最初のほうは知りあいの人たちだったり、周りのお店目当てで紙目的のお客さんがメインになるかもしれないけど、それついでに古道具を見たり、コーヒーを飲んでくれたら良いかなと思います。
ゆるやか文庫さんは五十崎から図書室も移転してきたので、本読みながらゆっくりコーヒー飲んでもらったり。ありがたいことに、本好きな人たちはコーヒー好きな人たちが多いから(笑)
あとは内子晴れ(内子の町並み保存地区にあるゲストハウス)さんが「今日はあそこが空いてるよ」と紹介してくれて来てくれるお客さんも多かったりと、内子の中でも繋がりやルートができとって。
「内子に来たら、ここを見て回る」みたいな流れの中に入っていけたら一番良いのかな。
―同感です!これからもたくさんの方に、この校舎のお店たちを見てもらうのが楽しみです。今日はお話聞かせてくださりありがとうございました!